元ギネスワールドレコーズジャパン代表、小川エリカさんへのインタビュー3回目。

今回はトップの「コミュニケーション力」についてお聞きします。

 

◆求められていることを瞬時に把握する

ーーDXの時代、リーダーに求められる要素の一つは「コミュニケーション力」といわれます。小川さんはどう取り組まれましたか?

 

常に「今この瞬間にリーダーとして私に何が求められているか」を把握し、発信することを心がけました。

新ビジネスを開発するとき、チームの力をどう引き出すか。

日々進化変化するチームや状況を理解して、一歩先を見ながらどうフィードバックするか。

自分の経験や知識を超える事柄でも、自分の能力をストレッチさせる力が必要でした。これはチャレンジでした。

 

ーーチームに伝える際、有効な方法などはお持ちでしたか。

当たり前ですが、数字を使いました。

世界中どこでも数字だけは雄弁で正直。データを使ってファクトを伝えれば説得力がある。だから数字で語れる業績を見つけ出すようにしました。

例えば、クレーム数が世界で最少、一方スタッフ定着率は最高。日本発の商品アイディアの数、コンバージョン率、コストパフォーマンス率など。あらゆる数字です。

たとえグローバルがKPIにしていない数値でも、日本市場の実績アピールになってストーリー性あるものなら見出そうとしました。

数字で語ればスタッフも直接的な達成感を得られます。エンゲージメントも高まりました。

 

◆英語力を日本語に活かす

――インターナショナルなチームを率いる際、コミュニケーションで工夫されたことは?

英語と日本語の特徴を使い分けました。はっきりと事実を伝える。良い評価もストレートに賞賛する。改善点は割り切って冷静に伝える。大事なディレクションは英語の文章で伝えました。

英語で考えて話すほうがシンプルに伝えられます。日本語で話すスピーチ原稿を「英語ならどう話すだろう」と考えて作ったりもしましたね。

 

ーー確かに。英語はシンプルで伝えやすい言語ですよね。他に難しかったことなどはおありですか?

 

スピーチではない場面、日々の業務の最中にインパクトある一言で伝えることは、ちょっと苦手でした。

でも身近な存在としてのリーダーでいるだけでは良くない。だからイメージ戦略も含めたスピーチトレーニングをしたいと思ったんです。

対外的に話す機会も経営者には大切ですけれど、社内スタッフに伝えることは難しかったですね。

 

◆チームと近いからこそ、自分の言葉が必要

ーーどの経営者も、社内向け発信が一番難しいとおっしゃいますね。

 

難しさは面白さ、でもありますけれど。

本社CEOにもコミュニケーションの重要性を常々指導されました。

「人間は他人の話はちゃんと聞いていない。一回話しただけでは伝わらない。

伝える場面と状況を変えて、人・グループを分けて、繰り返し何十回でも壊れたレコードのように(笑)。そしてメッセージはシンプルに」

でも一方でスタッフは想像以上に見ているんです、トップの日頃の態度や非言語情報も!お見通し。だからこそパワーあるメッセージを生み出せなければ行動するチームは生まれない!自分の発信力を高めなければ!と何度も痛感しました。

関係性が近いほど、強い確信を持って自分の言葉で伝えなければ、説得できません。

 

--お話は尽きないのですが、そろそろまとめです。ジョブ型、DX、これからの時代について小川さんの考えをお聞かせください。

 

今、コロナ危機が起きて、組織や会社の前に「個人としての生き方」を考え直すときです。

変化に対応し、変化の中に自ら選択肢を創り出して生き延びる。そんな人が活躍する時代だと確信します。

私がギネスに携わり始めたのは、リーマンショックの直後。

日本オフィスを設立した翌年に311東日本大震災が起きました。

そもそも社会人になったのがバブル崩壊後で、多くの企業が採用枠をなくしたり見合わせた年でした。

これまでの世界のあり方をお手本にすることができない世代だった。

何もない、失うものはないところから始めると案外怖いものはない。
だからみんなで無人島に新しい基地を創っていく感覚で、心からスパークできてクリエイティブな力を発揮できました。

経験や能力があるかどうかもわからない人間のチャレンジを歓迎してくれた組織と出会えて、幸運でした。

今は節目です。これまであったものが無くなっていき、新たに学び直さないといけない。一つの「チャンス」のタイミングですね。

私もその一人として、どう生きるか、ビジネスやライフスタイルの形を問い続け、活動していきたいと考えています。

 

ーーこの度のロングインタビュー、ありがとうございました。まとめに一言、お願いします。

 

スピーチは自分の輪郭を見せてくれる。

話すことで自分を知ることができる。

(聞き手:森 裕喜子)

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