【声とAI】連載②「己自身に忠実であれ」演出無用、身体は自然と語り出す。

スピーチ戦略

〜AIが知るよりも、人間は豊かに、複雑に生きている〜
新連載【声とAI】
いま、トップリーダーに求められる「生きた言葉」と、
想いを真っ直ぐに届ける「生身の声の力」を紐解きます。
<連載1回目はこちら>

◼️ 頭で書くか、身体を通すか
正直なところ、パソコンに向かって「頭」そして「手」を通して
文章を書こうとすると全く気持ちが上がりません。
ですので、記事を書くときもまず声に出しています。
すると不思議なことに、頭と手からは絶対出てこない言葉や表現が
たくさん出てきます。

スピーチは最終的に声で出します。
よって、準備段階から生身の身体を通して言葉を出す方が「生きた言葉」になる。
お客さまのスピーチトレーニングで実感しています。

今回の記事は、生きた言葉を届けるための
「身体を通す、伝え方(デリバリー)」がテーマです。

◼️ 「ぜんぜん、おもしろくない」の正体
前回第1回で、
元総理がAIのつくったスピーチ原稿を見て、
完璧な出来だが「ぜんぜんおもしろくない」と仰ったエピソードを
紹介しました。

伝え方(デリバリー)においても同様です。
デリバリーとは「間を取る」「声を大きくする」「メリハリをつける」
といった、どのように伝えるかのHOW。

頭で理解するだけではなく、実際に動いてみて、
微妙な体感覚で的確なHOWを見出していくことが大切です。
単に方法論を知っているだけでは本質的な解には辿り着けません。

◼️ デリバリーはスポーツと同じ「身体(フィジカル)」の領域
陸上競技の100メートル走で例えてみましょう。
「早く走る」には、地面の蹴り方、腕の振り方など
膨大な数のHOWがあるはずです。

さらに身体の状態や効果的な使い方は人によって異なり、
天気や会場環境なども考慮しなくてはならない。
思うように走って結果が出るかどうかは、
方法論を知っているだけではなく、行動して調整することが必要です。

スピーチも、これと全く同じです。
単に「姿勢良く立つ」というだけでも、
人によって違いが激しく、本当に一筋縄ではいきません。

人間が「身体を動かす」ことは実に奥深くて複雑。
いつも想定外だからおもしろいのです。

身体を持たないAI、どこまでこれを「わかる」でしょうか。

◼️ 借り物の伝え方
世間のプレゼンテーションを見渡すと、
「両手を大きく広げる」「ステージを歩き回る」
といった欧米スタイルの大きなパフォーマンスをよく目にしました。

新製品の記者発表のように「商品」が主役で、
その魅力をアピールすることが目的であれば、
この伝え方は真っ当な戦略の1つです。

一方、トップがご自身の想いや考えを語る場面は構造が異なります。
にもかかわらず、商品アピールの動きを採用すれば、
デリバリーとしては的外れです。

そもそも日本人の多くは、身振り手振りを交えて
表情豊かに話す習慣がありません。
そこに形だけを真似た「ここで拳を握る」「数歩歩く」
のような動きを加えると借り物になってしまいます。

トップには、長年ビジネスで培ってこられた
ご経験や、確かな存在感がそもそもおありです。

大切なメッセージを届ける本懐の舞台において、
ご自身以外の「何者か」を演じる必要はなく、
自分らしさを大いに出していただくことが大切です。

それには、ご自身の「呼吸」や「想い」と連動した、
自然体で身体をお使いいただくデリバリーが理想形の1つ。
お一人おひとりの身体の使い方や動きをよく拝察し、
大切にしながら取り組むことが欠かせません。

◼️ わずかな所作が、見事なデリバリーになるとき
以前、トレーニングをご一緒したトップリーダーのお話です。
詳細の数字を含めた長丁場の原稿も全て記憶され、
真っ直ぐな立ち姿にある静けさと強さ、印象的な雰囲気をお持ちの方でした。

新たなデリバリーに挑戦されるご要望でしたが、
「ここで歩きましょう」などの欧米型の足し算をすれば、
この方本来の魅力は消えてしまう、と感じていました。

本番に向けて何度も繰り返し話す練習をされていたときのこと。
ある瞬間、ご自身の想いが声に乗り、熱を帯びました。

言葉のエネルギーと呼吸が連動し、
声が力強くなり、「手」も動き出されたのです。

自然な体の動きが現れたこの瞬間、新たな伝え方の始まりを直感しました。

そして少しずつ、大聴衆にも伝わるように、
デリバリーのサイズを拡大するサポートを実施しました。

迎えた本番。
美しい直立の姿勢から、手と腕が自然と動き始めました。
静かで力強いデリバリー。
ご自身の存在そのままを表しながら、会場に拡がっていきました。

◼️ 自分らしさこそ、最強の戦略
借り物ではない自然な表現には、聞き手の記憶に残る本物のインパクトがあります。

「己自身に忠実であれ」
シェイクスピア作品『ハムレット』の中の言葉です。
世の流行りにもブレずに自分のやり方を貫くこと。自分らしくあること。

トップリーダーが想いを語る場面では、
自然と身体が動き出す、自分らしいデリバリーこそが最強です。

生きた言葉と自然な動き。
生身の声の力と連動して身体が語り出す。
その一瞬の輝きは、人間だからできる創造なのです。

◆◆◆◆
次回の連載3回目は、自然な声と身体を支える、
最も重要な「土台」を紐解きます。

<ご案内>
トップの心のなかには、人の心や組織を動かす「物語」がすでにあります。
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スピーチコーチ 森 裕喜子

御来訪ありがとうございます。AI時代、リーダーの生身の声こそチカラです。経営トップのコミュニケーション強化策「社長のスピーチ戦略」をマンツーマントレーニング・コンサルティングしています。

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